日本製鉄によるUSスチール買収の提案が、アメリカ政府によって阻止される可能性が浮上し、物議となっています。
約2兆円規模のこのUSスチール買収は、日本製鉄にとって大きなメリットをもたらす可能性と同時にUSスチールへのメリットも計り知れません。
しかし、このタイミングで政治的介入が障壁として立ちはだかっています。なぜバイデン大統領はUSスチール買収阻止を表明したのでしょうか?
この記事では、以下を見ていきます。
1.USスチール買収両社のメリット検証
2.なぜバイデンは阻止?なぜ今なのか?
3.USスチール買収阻止によるバイデンへのメリット
USスチール買収のメリット:日本製鉄 vs USスチール
USスチール買収における両社のメリットを検証していきます。
買収の話が進んでいたのは、下記のようなメリットがあったからこそだといえます。
日本製鉄 | USスチール |
---|---|
世界の鉄鋼生産量を約3分の1増やし、8500万トンに | 近代化に必要な資本と技術を確保 |
米国市場での存在感を拡大 | より大規模で資金力のあるグローバル鉄鋼 メーカーに対する競争力を強化 |
USスチールの幅広い顧客基盤とブランド 価値を得る | 日本製鉄の先進技術と運営ノウハウの恩恵を受ける |
USスチールの低コスト鉄鉱石鉱山を活用 | 14億ドルの潜在的な追加投資の可能性 |
両社にとって、メリットがあり、WinWinだったからこそ、買収が進んだと推測できます。
では、どうして、バイデンはこの買収を阻止しようとしているのか、そして、今まで阻止を表明するタイミングがあったにもかかわらず、なぜ今なのかが気になるところです。
なぜバイデンは阻止?なぜ今なのか?
では、バイデンがUSスチール買収を阻止する理由について解説、なぜこのタイミングなのかについて検証していきます。
バイデンがUSスチール買収を阻止する理由
ジョー・バイデン大統領による日本製鉄の149億ドルのUSスチール買収阻止の理由は主に2つ表明しています。
1.国家安全保障上の懸念
2.重要なサプライチェーンの保護
しかし、実はそれほど単純ではなく、色々な思惑が裏には隠されています。
その理由を見ていきましょう。
なぜ今、USスチール買収阻止の理由
USスチール買収阻止のタイミングは以下のような思惑からだと考えられています。
- 選挙年の政治:
USスチール本社はペンシルベニア州にあり、この州は民主党・共和党支持が拮抗する大統領選挙の激戦州です。
USスチール買収阻止はアメリカの雇用と産業を守るというバイデンの公約に則り、ペンシルべニア州民へのアピールをするため。 - 超党派の反対:
バイデンとドナルド・J・トランプ次期大統領の両者が、USスチールはアメリカの所有下にあるべきだと公に述べており、これが政治的な争点となっていたから。 - 労働組合の圧力:
影響力のある全米鉄鋼労働組合が、潜在的な雇用喪失と年金リスクや安保上の懸念を示し、買収を強く反対したことを受け、組合員の支持を集めるため。 - 規制審査:
対米外国投資委員会(CFIUS)がこの取引について合意に達することができず、決定をバイデンに委ねたため。 - 戦略的タイミング:
今、行動することで、バイデンは次期政権による潜在的な行動を先取りし、この重要な問題に関する権限を主張したかったから。
USスチール買収阻止によるバイデンへのメリット
買収阻止に成功することで、バイデンは以下のような戦略的および政治的メリットを得ることができます。
- 国家安全保障の維持:
バイデンは、国家安全保障と強靭なサプライチェーンに不可欠と考える重要産業をアメリカに留め維持する思惑がある。 - 政治的支持:
この決定は主要な工業州の有権者に共感を呼び、バイデンの政治的立場を潜在的に強化する可能性がある。 - 労働組合の支持:
全米鉄鋼労働組合の立場に同調することで、バイデンは組織労働との関係を強化できる。 - 経済的国家主義:
この動きは、アメリカの産業と雇用を海外の支配から守るというバイデンの公約を強化することができる。 - 戦略的産業の管理:
USスチールをアメリカに置くことで、インフラ、自動車産業、防衛産業基盤にとって重要なセクターに対する国内の影響力を維持できる。
まとめ
USスチール買収両社のメリット検証、バイデンの思惑とバイデン自身のメリットについて、まとめました。
ただし、バイデンがアメリカと自身のメリットのために取った措置とはいえ、潜在的なデメリットがあります。
日本との外交関係を緊張させ、アメリカ企業への海外投資を思いとどまらせ、USスチールが近代化に必要な資本と技術を確保するのに苦労する可能性があります。
結論として、バイデンによる日本製鉄のUSスチール買収阻止は、国家安全保障上の懸念、国内政治、経済戦略の複雑な相互作用を反映しており、短期的な政治的利益をもたらす可能性がある一方で、USスチールや他のアメリカ鉄鋼産業に対する長期的な影響は不透明だといえます。
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